【脱出ゲーム】密室症候群＠星川沙良

黒瓜時子（くろうり・ときこ）は特異体質の持ち主である。

小さい頃、戯れに入った廃屋に数日間閉じ込められ生死の境を彷徨って以来、彼女には人ならざるモノの“密室”に、時折囚われるようになってしまった。

空は薄曇り。

風は吹いていないのに、指先がしびれるように寒い。

町中が身をちぢこめているような、そんな季節。

今日も時子は歩く。どこへともなく、あてどなく。

それが時子の日課だった。

歩きながら、電柱に貼られている違法広告を破いてみたり、落ちているチラシごみを屑籠に突っ込んだり。

それは時子の趣味だった。

（こんなものを見て、電話する人などいるのだろうか？）

破いた広告をしげしげと見つめてみる。

“どうにもならないお悩みは、霊障かも知れませんよ！詳しくはTEL→○○▽‐■■××”

……どうにもこうにも胡散臭さしか感じない。

（こんな時代だ。藁にもすがりたい人は一定数いるのだろう）

時子はそう勝手に納得して、屑籠にゴミを突っ込んだ。

空は薄曇り。

雪は降るのだろうか。時子は仰ぎ見る。

雲は動かない。空に張り付いているように、まんじりともせずそこにある。

視線を前方に戻す。

木々も葉も、チラシも砂埃一つすらも動かない。

動かないのは当然だ。風など吹いていないのだから。

それなのに感じるこの違和感は……。

ぴちゃり。

何かが靴先を濡らす。

目を落とすと、やけに地面が濡れている。

雨も雪も、ここ数日降ってはいないのに。

ぴちゃり。

気が付けば、踵まで濡れている。

動かない景色の中、足元の水気だけが動いている。

水気の流れてくる方へ、ゆっくりと視線を動かす。

ぴちゃり。

誰かの、足。

傷だらけの素足、そして。

ぴちゃり。

滴る水滴。

その水滴は、長い少女の髪先から。

それ以上視線を上げたら……。

ぴちゃり。

白い指先にも滴は伝う。

服も、首筋も、水浸しで……。

それ以上視線を上げたら。

ぴちゃり。

色をなくした唇と、頬を伝うのはただの水？それとも……。

それ以上視線を上げたら、

―――目が合ってしまう。

びたびたに濡れて顔に張り付く少女の髪の、その狭間。

息もできずただ、足元が崩れゆく感覚に身を任せるほかなくなり、どこで引き返していればこうならずに済んだのか、考えてみても詮無きことなのに。

空は薄曇り。

最後に見たものは曇天だったのか、少女の瞳の色だったのか。

今となっては、もう。

・・・

ジブラルタルがお届けする密室脱出アドベンチャーゲーム「密室症候群」シリーズ第6弾です。

シリーズ6作目ではありますが、本作からいきなりプレイされても大丈夫です！

クリア後のおまけの一部に過去作品への言及・過去作キャラクターの出演などがありますが、本編プレイでは特に支障はありません。

ストーリー重視の脱出ゲームで、回を追うごとに話が長くなっております（1作目はほとんどストーリーはありませんでした）が、脱出ゲームとしての難易度はそんなに高くないと思います。

今回もどうか時子と一緒に救われない少女の魂の檻を解き放ってあげてください。

このゲームは複数のエンディングがあるマルチエンディングとなっておりますが、いきなりバッドエンドやトゥルーエンドは見られない仕様となっております。

ノーマルエンドを見た上に一定の条件を満たさないとバッドエンドが見られないという具合に、マルチエンディングなのに一本道な構成になっております。

バッドエンドは若干怖かったり後味が悪かったりしますが、上記のようにいきなり怖い展開になる恐れがないので、怖がりの方も安心（？）です。

SO-01B(Android 2.1)にて稼動テストを行いましたので、それ以降の機種であれば恐らく動くのだと思います。

不具合報告は当記事のコメント欄、またはkurimangerアットマークgibraltar.jpn.orgまで。

こまめにお返事は出来ませんが、すべて目を通し出来うる限りの対処はしていく所存です。

・・・

【攻略掲示板ができました！】

今まではブログのコメント欄にて攻略についての質問を頂いていましたが、過去ログが見づらかったり検索が出来なかったりして不便なので、専用掲示板を立ち上げました。

栗饅頭やユーザー様同士で和気藹々と情報のやり取りが出来ればと思います。

どうぞご利用下さい！

http://gibraltar.jpn.org/c-board.cgi

※攻略情報の質問に関しては↑の掲示板の方がレスつくの早いのでおススメです！